環境権研究会

環境権研究会とは

憲法と環境政策

研究会の目的

本研究会の意義づけ

当面の目標

中間報告書

活動経過

各党の主張

最終報告書

・最終報告書

◎議論の経過について

 環境政策ネットワーク環境権研究会は、2002年9月から2005年2月まで19回にわたり会合を重ねてきた。各会合で議論された内容とその変遷をここでは簡単に紹介する。

 

1.2002年9月~2003年12月

  当初は、国による環境政策の実施の実効性を高める観点から、環境権を憲法で保障する政策提言を行うことを企図して、環境権に関する理論を理解し、「厚み」のある提言内容にするべく知識の共有と深耕を行った。最初の5回の会合においては、①環境権のこれまでの議論の整理、②環境権の概要、③憲法調査会の動向、④各国の環境権の内容、⑤NGOや弁護士会等の環境権に関する主張などを調査し、⑥環境権が争われた裁判事例(12事例)の概略を習得する等、研究会メンバーの知識を高めた。そのなかで、環境破壊を類型化して、加害者と被害者を整理することにより、「加害・被害の利益衝突に対応するいかなる権利義務関係を必要とするのか」をマッピングし、環境問題の加害者・被害者の視点から権利・義務を整理した。

  こうした検討を行なっていく過程で、「憲法は国家と国民の間の規範のため、通常、国内的な視点が強いが、いまや環境問題は地球的規模で生じており、憲法上に環境権に明記する場合に、地球環境問題に対処することも考慮しなればならない」「環境権だけを提唱するのではなく、改憲・護憲への立場も明確にしていくべき」「環境権だけではなく、他の権利規定や条項との整合性を考える必要性もあるのでは」といった指摘が出された。また、会合を重ねる過程で、「環境」をどのように捉えていくのかを考える機会としてもこの研究会を活用していくこととした。

 この時期においては、環境権により環境施策の実効性が高まればいいという考えのもと、「環境権」を「国家が環境保全を理由に国民の基本権を制約することができる権利」(「環境施策権」と命名)と捉えた。そして、研究会会合でのレジュメなどを整理し、「中間報告書」としてとりまとめ2003年12月に発表した(環境政策ネットワークHP参照)。

 

2.2004年1月~2005年3月
 
  中間報告書発表後は、環境権について争われた裁判例を題材とした事例研究を行ない、①原告の主張と裁判所の判決の相違は何か、裁判所の判断基準は何か、②それに対する私見(裁判所の判決は妥当か、それとも妥当でないか、妥当でないとすれば何がネックになっていると考えるのか)をメンバーで議論した。これにより、各人がもっている「環境権」観の相違を明らかにし、研究会の見解として、「環境権」により何を守るのか合意を図るとともに、紛争当事者と法理論のギャップをどこまでどのように埋めるべきかを考える(つまりは我々にとっての「環境権」を定義する)こととした。取り上げた事例は、大阪国際空港訴訟第1審・控訴審判決、豊前火力発電所操業差止訴訟、国立大学通り民事差止め訴訟第1審判決、村道共用妨害排除請求事件、長浜町入浜権訴訟である。

  問題の解決を促進するために環境権をどのように捉えるか、また環境権が問題の解決を図ることのできる決め手になる可能性を検証し、学説を照らしながら、環境に関する価値が法的にみて、どのように位置付けられているのかを明らかにしていった。


 事例研究を通じて、研究会としてコンセンサスを図るべきことを整理した上で、「憲法は国民から国家への制限規範である」ということを確認して、「国家の役割をどのように考えるか」について議論を行った。また、環境政策ネットワークとしての中立性を保つために、特定の政党や特定の政治家個人だけに対して直接的な働きかけはしないこととし、HPでの公開、パブリックコメントの利用等による政策提言を行い、要請に応じて我々の見解を社会に対して中立的な立場から公表することとした。研究会の目的も、「国家の環境政策の実効性を高めること」から、「環境問題を解決するための手段として、環境権という権利義務概念はどのような意味において有効かという点を憲法改正議論に合わせて、環境保全に中立な立場で提示すること」とした。

 そこで、①歴史的・伝統的な価値観を踏まえた意味での環境や②法的に保護されるべき環境とは何かを検討したうえで、環境権の内容を以下のように定式化し、事例研究で取り上げた判例を具体的に当てはめて検討を行った。

 「空間(A)における主体(B)の一定の価値(C)が、対立する他の利益(D)によって一定程度(E)まで侵害された時点(F)で、一定の判断基準(G)をもとに、一定の法規範(H)に基づいて、一定の限度で(I)で保護される権利」  

 しかしながら、当てはめを行った結果、A、B、Cについてはケースによってはあらかじめ定められないことが分かった。そこで、例えば、空間に対する概念を整理してみたところ、現状の『空間』の価値を認めている者と改変をしようとしている者との権利義務という視点が出され、「空間利用に関する事実の積み重ねをどのように評価すべきか」「環境改変に利害はあっても、関心を示さず手続に参加しない人々の利益はどのように保護すべきか」を検討し、「良好な環境」はどのように決められるべきかについて議論をした。

 そして、議論の到達点として、「良好な環境の価値判断を行う場」と「環境改変行為の意思決定の場」を分けて考え、利害関係者の合意形成を踏まえて環境改変が決められる制度的な手続を整備する必要がある、という結論に達した。環境権に関しては、良好な環境の価値判断について意見を述べる権利と定義し、何人も、良好な環境に関する価値判断の場に参加して意見を述べることができると考えることとした。

最終報告書(PDF:325kb)



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