環境権に関する提言

環境政策ネットワーク環境権研究会

1.はじめに

現行の日本国憲法には環境保全に関する規定が存在しない。そこで、近時、日本国憲法の改正を巡る議論の中で、「環境権」規定の導入が各政党より検討課題として唱えられている(1)。環境権自体は目新しい概念ではない。これを最初に提唱した大阪弁護士会環境権研究会編〔1973〕をはじめ、芦部〔2002〕等の近時の学説においても、「環境権」は通常「良好な環境を享受する権利」として定義され、現行憲法の解釈上認められるかどうか、裁判上・学説上論争となってきた(2)。

しかし、たとえば松本〔2004〕が指摘するように、「何人も良好な環境を享受する権利を有する」と憲法に単に明記するだけでは、どのような権利なのか、意味内容がはっきりしないため、環境保全の実効性を挙げることは難しい(3)。

したがって、環境権規定を憲法に設けることに加え、「環境権は憲法上どのような意味内容をもつ権利として位置付けることができるか」と「憲法上明記された環境権が環境保全のためにいかなる法制度を導くこととなるのか」を明確にすることが重要となる。

そこで本提言では、今後、憲法改正を巡る議論の中で取り上げられるものと予想される環境権規定の解釈指針および環境保全に関する法整備の方向性を示したい。


(1)自由民主党「憲法改正のポイント―憲法改正に向けての主な論点―」(2004)、民主党「憲法提言中間報告」(2004)

(2)大阪弁護士会環境権研究会編『環境権』(日本評論社、1973)、芦部信喜・高橋和之補訂『憲法』(岩波書店、第2版、2002)。詳細は、補論1「環境権をめぐる判例・学説の動向」参照。

(3)松本和彦「憲法と環境基本法」阪大法学54巻4号15頁(2004)。