環境権研究会
研究会の目的
国の最高法規たる憲法上、環境に関する価値がどのように位置付けられているか」が問題となるわけだが、そうした議論において、まず参照されるのが「環境権」論です。後述するように、「環境権」は1970年代以降の公害裁判において、被害者である原告が加害者である被告に対して法的な救済を求めるために憲法上の基本的人権の1つとして主張されてきた経緯をもちます。しかしこの経緯からも明らかなように、そもそも「環境権」は「環境は権利・義務概念により守ることができる」という前提が暗黙のうちに承認されたうえで展開されている理論です。一見これは自明のようにも見えるが、当時とは社会が大きく変わりつつある今にあっては、常に妥当するとは限らないように思います。ここでいう社会の変化として重要なのは次の2点です。
第1は、解決すべき問題対象が局地的・激甚な公害問題から地球環境問題や生活妨害といったより多様で複雑な問題へと変容しており、加害者・被害者さらには当事者が必ずしも明確ではない状況が生じつつあること、第2は、問題解決のあり方が、加害者=企業・政府 対 被害者=市民の間の交渉や争訟から政府・企業・市民の適正な役割分担と協働へ変化しつつあることです。それに伴って、従来の環境権論を修正する試みも有識者の間ではなされるようになってきたが、そもそも「環境問題を権利者・義務者の二当事者対立構造に定式化すること」が可能かどうか、それが望ましいことなのか?という点を正面から論じている見解はそれほど見当たらないように思えます。
そこで、本研究会では、環境問題の解決のあり方として、「環境問題を権利者・義務者の二当事者対立構造に定式化すること」が可能かどうか、そもそもそれが望ましいことなのか、という点をまず検討します。仮にその結果として、環境権がベターであると結論が得られた場合には、「環境に関する価値をどのように法制度上位置づければ環境問題の解決に資するか」という観点から、私たちなりに環境権の内容を構想する。それをこれまでの裁判例など具体的な事例に当てはめてみたり、学説を照らし合わせたりして、問題の解決を促進できるかどうかを検証します。進んでそのために必要な法制度についても検討する。それは、現行憲法上、また現行の法制度上、環境に関する価値がどのように位置付けられているのかを明らかにすることも伴います。
同時に、問題の対象である「環境」をどのように捉えていくのかを考える機会としてもこの研究会の意義にしたいと考えています。